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上海の窓

 旅先では忙しい。慌ただしいばかりで何も成果がないとさえ思うときがある。でも、自分の忙しさを忘れると、突然別天地が開く瞬間がある。これは私ひとりの経験ではなく、周りの旅好きな男たちも口を揃えてそう言っている。

 今日の昼の便で日本に戻る。上海から大阪まで飛行機でわずか1時間35分、先週金曜日に北京から乗り換え便で武漢に行ったときも1時間半ほどだった。時間は公平だ。国内にいようが海外にいようが時間は公平にかかるわけだ。どうやら時間の感覚は空間の感覚よりもリアルらしく、見知った場所よりも、まず思考を惹起するのは時間のほうかもしれない。

 日曜の朝一番の便で、武漢から上海に戻ってきた。定刻より早く天河空港に着いたときに「麦麦麺」というラーメン屋に入った。看板には、はっきりと「麦」の字が二つ書いてあるのだが、若いウェイトレスたちは客が入ってくるたびに「麦麺にようこそ」と言うのだ。どう聞いてもやっぱり、彼女たちはもう一つの「麦」を省略している。少しでも手間をはぶきたいらしい。「麦」と「麦麦」では、意味は同じなのか、それとも違う意味になるのか、それは知らないけれども、このラーメン屋の名前はいっそ「麦麺」にしてしまったほうがいいのではないか。そのほうがウェイトレスは喜ぶだろう。

 朝には急ぐ用事もなかったので、ラーメンを食べながら、まったくとりとめもないことをあれこれと考えた。

 今朝起きて、ホテルの窓を開けたら、上海の朝の喧騒が徐々に部屋まで伝わってきた。本当は窓を開けなくても街のノイズは聞こえるのだが、やっぱり窓を開けて動画を撮影した。おかげで自分も大上海の朝の一部になれた。上海の若いいとこたちは今頃、朝自習をしている時間だろうか。

 昼、浦東空港についてから水餃子を食べた。キリンビールを頼んだら、瓶に「一番搾りの麦汁だけを使用しました」と書いてあったので、天河空港のラーメン屋を思い出した。ビールを飲みながらまた考え事をした。今度の考え事は、ちゃんと筋道がある。

 明日は車で京都のお寺に出かける予定だから、日本が晴れだといいな。
by amaodq78 | 2011-12-03 10:44 | 文事清流
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