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卒業式

 毎年3月は、大学の卒業式の季節だ。大学によって規模は違うけれど式次第は大体同じだ。開会の言葉、学位の授与、校長の祝辞、卒業生代表の答辞、校歌の斉唱、閉会の言葉。教師と学生にとって、形式的な卒業式よりも、むしろ、キャンパスでの記念撮影や夜遅くまで続く卒業パーティーのほうが記念イベントの中心かもしれない。しかし、毎年3月の休暇には中国に帰国しているので、今まで卒業式には出席したことがない。今年もそうだ。ただ、今年は心が温かくなる出来事があった。

 ある学生から、週末の予定を尋ねられた。「とくに予定はない」と答えると、彼は「毛先生、僕たち卒業生のクラスのコンパに出ていただけませんか?」と言う。私は「君たち、論文はできたの? まだ終わってない学生もいるんじゃないの?」と答えた。学生の幹事らしい彼は、私のによく似た黒縁眼鏡を押し上げながら「先生、大丈夫です。みんな頑張ってますから」。結局、コンパに出ると約束した。

 大学には「合宿」と呼ばれるおもしろい制度がある。教師が学生を連れて田舎まで出かけ一緒に民宿に泊まり、昼間はセミナー、夜は宴会で語り明かし、教師と学生が互いに打ち解ける。すると、学生は気軽に先生に相談できるようになる。もちろん、今回の集まりは「合宿」ではない、普通のコンパだ。そして正確には、その日時点で彼らはまだ卒業見込み生だ。

 約束の時間どおり会場の居酒屋に着いた。中に入ってみて驚いた。学生たちは全員正装している。女子学生は結上げた髪に花を挿し、男子学生も羽織袴だ。この晩ほど和服がおごそかに思えたことはなかった。

 一人の女子学生が挨拶した。「毛先生は私たちの卒業式には出席できないと聞きました。でも私たちには一生の記念ですから、長い間教えていただいた先生に感謝したくて、卒業式の前ですけど、今日は正装して先生にご挨拶することにしました。お忙しいところありがとうございます。」

 こうしてまた学生たちが港を離れ旅立って行くのを目の当たりにするのは、大学の教員にとって感慨深い。学生たちがそれぞれの夢を実現させ、いつまでも幸せでいるよう願ってやまない。
by amaodq78 | 2010-04-27 06:05 | ノスタルジックな時間
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