あとになってから旅の思い出を語ると、記憶の中に蘇ってくるのはいつも誰かとの会話、それにその人がいる場所からの眺めであることが多い。なんとも旅情に乏しい限りだが、理由ははっきりしていない。
北京への飛行機に乗って旅に出かけながら、近づいたイベントのために関連書籍を読み込んでいるから、実際の旅とあまり関係ないのである。 おととし、作家の李鋭さんの大阪講演会のあと、京都市内のホテルへ移動。秋の夕陽に暮れなずむ電車沿線の風景、すべてが輝かしい …… 古い町屋のただずまい、細い路地、道にかかるアーチ、家並みの奥へと続く階段、かつて御所近くの喫茶店で大手出版社の役員と一緒に飲んだコーヒーの味は忘れられない。 ありのままに見たまま聞いたままを文章にしたいと思っていても、文章は現実そのものではない。確かに複雑な多面的な現実を、作家というひとりの人間の位置からとらえた現実の一部に過ぎない。場合によっては、その一部の現実を、作家の選んだ言葉に置き換えたものに過ぎないのである。 ひとつの情景が再発見によって記憶に結びつくとき、その結びつきはどんなものにも成長して固くなるのだ。 表紙は李鋭さんとの共著、今月から中国全土で発売される予定↓
by amaodq78
| 2009-01-12 23:53
| 文事清流
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